この項目の内容はPDFファイルでご覧頂けます。
>> 「バイオマスボイラにおける木質燃料とシステムについての知識(重要)」(1MB)
バイオマスボイラの出力は燃料の条件によって変動する。すなわち燃料の条件が「変数」であることをまず前提とする必要がある。したがってその「解」である出力も変動する。
「ボイラが継続して一定の出力を出す。」というのは燃料が均質で、重量当たり同じ発熱量を維持し、フル燃焼を前提にした場合で、性状が変動するバイオマス燃料を使う場合には、燃料の変化に対する燃焼制御や必要な熱量を供給できるシステムが必要である。
変動しうるバイオマス燃料を用いた熱供給システムでは、次のポイントが条件である。
燃料の「変数」とは
そしてその結果としての
右の表のように、チップでも重量あたりの発熱量は湿潤チップと乾燥チップとでは最大1:2もの差がある。 同じ出力を得るためには燃料チップの搬送量はその発熱量によって調整する必要がある。 |
↑図をクリックすると 拡大図が開きます。) |
木質バイオマスを燃焼した場合に灰が残留する。化学分析によって得られたその量は木部では針葉樹、広葉樹を含めて絶乾重量の1%弱であるが、樹皮は多く、針葉樹では1〜2%、広葉樹では5〜7%となっている。(下表)
灰分が多いと、発生した燃焼灰そのものが燃料を覆い、燃焼を妨げる。また灰が燃焼空気口に入り込むと、十分な燃焼空気が供給されない。800℃以上の炉内温度では灰が原因のクリンカーが塊となって発生しやすくなり、炉壁などに付着してトラブルの原因となりやすい。
ボイラによって、燃料の許容範囲があり、たとえば「生チップ焚きボイラ」では木質の含水率は120%(乾量基準)が上限であり、それ以上の場合は運転しても、負荷変動に対して炉内温度が上がらず、ボイラは良好な燃焼を継続できない。
「乾燥チップ焚きボイラ」では出力150KWまでは含水率上限は50%、180KW,以上では含水率上限は80%(乾量基準)である(自動着火は含水率60%以下で可能)。
生チップ焚きボイラには5つの燃焼制御システムが搭載されている。 このうち特に、サイロからの燃料の含水率、樹種などは変動するために、熱交換部の出口に、排気ガス中の酸素濃度を保つO2センサー(ラムダセンサー)を設けて、適当な酸素濃度を保つよう燃焼空気量を制御し、燃料の変動にも、最適燃焼ができるような制御を行う。
サイロ容量と燃料の種類によって燃料積み出し方式を選択する。
プッシュフィーダー方式 |
スウィーベルアーム方式 |
スプリングアーム方式 |
油圧装置でバーを稼動。 大容量サイロで、生チップ、乾燥チップ、バーク燃料に対応。 |
モーターによりアームを回転。 直径6mの中容量サイロで、生チップ、乾燥チップに対応。 |
モーターによりアームを回転。 直径3m以下の小容量サイロで乾燥チップ、ペレットに対応。 |
木質燃料搬送装置には「スクリューコンベア」と「チェーンコンベア」とがある。
一定の径のスクリューが回転することによってチップを搬送する。比較的高い精度の量でチップを搬送することができる。このスクリューが搬送できる木質のサイズの範囲は原則80mm×20mm×10mm以内のものが求められ、その規格外であればスムーズに燃料は搬送されない恐れがある。サイロから搬送装置へ、あるいは搬送装置の中継箱などでは、木質のサイズが適切でなければ、ブリッジを発生する可能性がある。特に、破砕型チップは圧縮されやすく、容易にブリッジが発生するので注意を要する。
また規定より長いチップは、スクリューに噛んでモーターに過大な負荷をかけたり、搬送路上のセンサーに引っかかって動作エラーを発生させることがある。スクリューの傾斜は45°以内に収める必要がある。
スクリューコンベア |
中継箱 |
長さが25cm程度まである規定寸法より長いチップ(バークを含む。)を搬送する場合は幅の広いチェーンコンベアを選択する。
チェーンコンベアはほとんど垂直な方向にもチップを搬送できる。
但し、搬送量はスクリューコンベアに比べ、精度は荒い。
チェーンコンベア |
チェーンコンベア頂部 |
固定燃料によるボイラの運転は「船の舵」のようである。すなわち、ボイラの冷缶状態からの起動時で着火から所定の出力が出るまで数時間〜半日程度かかる。また停止ボタンを押してからボイラが完全に停止し、冷却するまでは1日程度かかる、すなわち、木質焚きボイラでは「追随性が緩慢である」ということである。
@高負荷状態でボイラが燃焼しているときは、ボイラへの還り温度は低く、ボイラ缶水温度は設定温度以下に保たれ、ボイラは目一杯稼動し、十分な出力で運転される。
Aその状態から負荷が急に減少した場合、炉内の残り火の熱を吸収できなくなり、ボイラ缶水温度は一時的に上がるオーバーシュートという現象により、局所沸騰が起こる場合がある。ボイラは炉内の木質燃料がなくなるまで燃焼状態は続き、燃料が燃え尽きるころからようやく缶水温度は下がる。
このように、ボイラのOFF指示をしても、燃焼停止状態まで時間差がある。場合によってはボイラの温水温度のハイリミットが作動し、ボイラはエラー警報を発して停止する。 木質焚きボイラの運転では、できるだけ発停を繰り返さず、ベース負荷に見合う一定出力での連続運転が好ましく、蓄熱タンクやバックアップボイラなどと組み合わせたり、24時間連続運転を前提に負荷の変動をあまり受けにくい出力レベルで運転されるような能力のボイラを選定することが望ましい。
燃焼炉内は煙道部に取り付けた誘引ファンによって燃焼空気を引き込んで燃焼炉内を負圧状態で燃焼を行う。これは、木質焚きボイラではバーナ側からのみ燃焼空気を送る加圧燃焼がなじまないことと、同時に木質焚きボイラでは燃料投入部などに隙間があり、強制誘引でないと有毒な燃焼ガスが機械室内に逆流する恐れがあるためである。 停止時には炉内の負圧がなくなるので、燃焼炉内に残り火があるときは機械室内への燃焼ガスの逆流をおこさないために、煙突のドラフトの働きが必要であると同時に、機械室内は停止時でも残り火がある限りは加圧状態になるようにしておくことが肝要である。
木質焚きボイラでは突然の電源の停止がある場合、次のような現象が起こる可能性がある。
@停止直後に温水循環が止まって熱の行き場がない場合は、残り火の燃焼が続いて、缶水が沸騰し、ボイラ缶水量が十分でないと沸騰水がボイラから噴出する可能性がある。温水のハイリミットの設定温度の検討とボイラ缶水容量を大きめにするなどのボイラ側の対策と同時に、負荷側のシステムでは負荷をいきなりゼロにしないことが大切である。
A突然の停電時には燃焼室の燃料の残り火からサイロのほうへ逆火する可能性がある。その対策として燃料搬送装置が多段式で燃料の経路をいったん区切り、空気流の遮断を行う。またセンサーによって燃料搬送路の異常高温を感知して緊急停止し、搭載されている緊急警報システムで通報し、さらにその搬送路に消火用の水が自動的に送られる仕組みになって、三重四重に火災の防止対策をとっている。
含水率の高い木質燃料を燃焼させる場合、水分の発生も多くなるが、通常の燃焼では燃焼ガスとともに煙道から排出される。
しかし次のようなケースでは問題が起こり、故障や事故などにつながる恐れがある。
@含水率がボイラの許容限度を超えて高い場合:水分の乾燥にほとんどのエネルギーを奪われ、不完全燃焼が起こりやすくなる。燃焼炉壁での蓄熱も減少し、本来水分を蒸発させる効果も低下する。この場合には黒煙が発生し、排気ガス温度も低く、木質燃料から発生した水分が煙突から十分排出されないで、再び結露する可能性がある。
A負荷がかなり低い場合:燃焼エネルギーが低くなり、上と同様な現象が起こりうる。ボイラは発停を繰り返し、燃料と空気のバランスが崩れやすく、未燃のすすが出て、黒煙と煤塵が多量に発生しやすくなる。
B外気温が低く、煙突の断熱や高さが不十分な場合:結露がおこりやすくなる。
|
||
不完全燃焼時の煙 |
煙突に付着したスス |
|
(注)岩手県林業技術センター提供 |
化石燃料では均質の燃料であり、その搬送速度は一定でよいが、木質焚きボイラでは燃料の性状の変動が急激な場合には燃焼が不安定となり、煙やすすを発生するなどの問題が発生する。変化がそれほど大きくなければ、ラムダ制御で好燃焼を維持するための対応ができるが、燃料の性状変化が著しい場合には制御のパラメータを調整する必要がある。
@燃料の含水率については、原木、チップ製造時、サイロへの投入時など常に注意を払い、基準値以上の含水率にならないように(生チップで湿潤含水率50%以下)、また含水率変化が大きくなり過ぎないように管理する。
A形状については、スクリューコンベアの場合には、切削型のチップを用い、寸法を80mm×20mm×10mm以内(製紙用チップの形状(4〜5cm角×0.5〜1cm)でも可)とする。それ以外は搬送装置などに別途配慮する必要がある。
B負荷が大きく変動しないようなシステムを組む。
負荷が低い場合の対策には、緩衝用の蓄熱タンクを組み合わせるなどして、発停が頻繁に行われないようなシステムを組んでおく。負荷が多すぎる場合でも、還水温度が低下して炉内温度が下がる場合があり、三方弁を組み合わせるなどして、ボイラへの負荷をかけすぎないようにする。
C煙突・煙道には十分な断熱を施す必要がある
D逐次、燃焼炉内、煙管、サイクロンなどの部分のボイラ点検を励行し、一定頻度で掃除をすることが大切である
1)バイオマスボイラはベース負荷に見合い、低負荷にも対応しやすい大きすぎないバイオマスボイラを選定し、極力24時間連続運転を行う。
2)蓄熱タンクを設置し、要求される一定の熱量を一定の温度で蓄えておき、速やかに負荷変動に対応できるようにする
3)化石燃料によるバックアップボイラを設置し、ピーク負荷に対するバイオマスボイラの出力不足をカバーする。また85℃以上の高温の温水が求められた場合に対応する。
4)複数台のバイオマスボイラを設置し、負荷に応じて運転台数を制御する。
(注)温水熱源の低温型吸収冷凍機ではその性能を最大化するのに88℃の温水が求められる。
(例)暖房出力kcal/h=温水循環量Qc( L /h)×温水の往き還り温度差(Tout−Tin)℃
上記の現象はいずれもチップの含水率が高すぎるためであると考えられる。ボイラの許容含水率の上限は120%(乾量基準)で、これを超えると